コラム

社長コラム
2021.09.02
講習会
閑話休題ロゴ

 みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。

 大雨が続いたお盆休みの真っ最中、ある講習会に参加してきました。その名も「サイクルセイフティ」。近ごろ自転車のレースやイベント中の死傷事故が急増しています。この状況に危機感を持ち、事故の現場で確実に命を救う方法を医師や救急隊員以外の人にも知ってもらいたい、と始めたのがこの「サイクルセイフティ」。主催者は国内外の登山や山岳遭難救助の仕事を通じて登山医学を学び、ロード・競輪・トライアスロンのコーチも務めた経歴の持ち主です。

 さて、この講習会の最大の特徴は徹底した体験型カリキュラム。具体的には「安全確保と状況評価」「初期評価とCPR(心肺蘇生法)」「全身観察と詳細観察」「処置と搬送」の4つの実習を、6人ずつ4つの班に分けて受講します。講習は、説明を聞きつつロールプレイング形式でケガ人と救助担当を全員が交代で実体験するというもの。そして実際に路上(会場は自動車教習所だったので教習コース)へ出て、事故発生から搬送まで分担して実践するという、リアリティ感半端ないメニューをこなして終了。盛りだくさんの講習が、朝の9時から16時半まで息つく間もなく続きます。

 講師は日本サイクリングガイド協会の理事長(私と同い年)、神奈川県の消防署に勤める救急救命士、同じく神奈川県の救急救命センターに勤める医師で、しかも全員がロードレースやトライアスロンに参戦する現役アスリートという豪華な顔ぶれ。対する講習の参加者は、自転車メーカーやサイクルツアーを主催する自転車店の社員など24名。うち1名だけが広告代理店勤務でした(笑)。

 いよいよ講義開始。冒頭の座学では死亡・負傷事故のリアルな動画と解説が延々と続き、身も心もギュッと引き締められます。続く実習では、事故現場でまず自分たちを守る安全確保、AEDを使用しての心肺蘇生、外傷の様子を触診で調べる全身観察、頭部保持したままストレッチャーに乗せる搬送など、アタマではわかっていても…と、己の無力さを思い知らされる底意地の悪いメニューが勢揃い。ただ、AEDの取扱いと胸骨圧迫だけはお褒めの言葉をいただきました🌸。

 最後の路上実習は、脇道から飛び出してきた大型SUVが猛スピードでツーリング中の隊列に突っ込み、心肺停止と頸椎損傷のケガ人が発生した、との状況設定でスタート。さあみんなで安全確保と通報、要救護者への措置、救急隊員への状況説明と、十数名がそれぞれ定められた手順通りにテキパキと...進むわけがなく、暴風と豪雨という激しい気象条件に翻弄されながら、右往左往しつつなんとか形だけ救助活動を終えた、とそんな感じでした。最後に厳しいながらも温かさを感じる講評を受けて、ミッションコンプリート。

 今回、講師が何度も訴えていたのは「命を救う行為は、誰にでもできるわけではありません。ただ、そういう場面に遭遇した時に『これならできそう』と自ら手を挙げる人が増えてくれれば、救える可能性のある命を確実に救います」。という言葉。気軽な反面、事故となれば体に重大な影響を与える自転車という乗り物は、いつ事故に遭ってもおかしくはありません。そんな不幸な出来事に直面した時、臆することなく「これならできそう」なことが実行できるよう、この日の学びを活かそうと思います。