
みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
歴史上初めて院政を行い、強大な権力をふるった白河法皇が『平家物語』で嘆いた、「賀茂川の水、双六の賽(さい)、山法師」。なかでも賀茂川(鴨川)は、いまでは想像できないほどの暴れ川で、古来より何度も氾濫を繰り返してきました。かつての鴨川の川幅は、現在の寺町通のすぐ横から南座の東側を通る大和大路あたりまでと広く、その幅は400~500mもありました。司馬遼太郎著『燃えよ剣』では、土方歳三が宿敵・七里研之介とその仲間たちを相手に斬り合い、あわや!というところで沖田総司が加勢し救われる場面がありますが、この川の広大な中州が舞台でした。

以前から、この鴨川の源流がどんなところか見てみたいと考えていたところ、突然その機会がやってきました。サイクルツーリズムの会社を運営する友人から、「自転車で京都の水を巡る旅を企画したい。ついてはコースを考えて欲しい」とのオファーが、在住たった30年のエセ京都人に寄せられました。「京都の水」であれば鴨川は外せない。ということで、ほんまもんの京都人(笑)もあまり知らない鴨川の源流をご紹介します。


京都市内を流れる川は、すべて桂川に合流し淀川となって大阪湾を目指します。鴨川はその支流のひとつ。地図を見ると、鴨川はアルファベットの「Y」の字の形をしていることがわかります。今回はその左側、賀茂川の上流へ向かいます。出発地点は、Yの付け根にあたる出町柳。ここから川の上流を眺めると、丹波高地へつながる屏風のような山々が目に入ります。その中央にあるのが、この川のふるさとである桟敷ヶ岳です。


賀茂川の河川敷は最近になって簡易舗装が施されたため、歩行者にとっても自転車にとっても快適な空間になりました。北大路橋や北山大橋をくぐり、上賀茂神社の参道前にある御園橋から車道に上がると、みるみる山が近づいてきます。市街地から自転車で30分も走ると、山紫水明の風景が広がるのも京都の魅力のひとつですね。


鞍馬や貴船へ向かう道と分かれてさらに進むと、周囲は北山杉に覆われ、道路の勾配はきつくなり、川のせせらぎと鳥の鳴き声しか聞こえなくなります。まさに別天地ではありますが、とにかくしんどい。この辺りは、ゆるい登りときつい登りが交互に長く続くため、知らぬうちに脚力を使っていて、息が上がります。


あえぐこと20分、岩屋のバス停に着くと川はさらに二手に分かれます。左の岩屋川を遡ると、先月もお出ましになった弘法大師空海が創建した志明院があります。一般的には、この敷地内の洞窟から湧き出す水が鴨川の最初の一滴とされています。しかし洞窟には入れないので源流を訪ねたことにはならない。もう一方の祖父谷川の方は源流まで自由に立ち入れるため、今回はこちらを目指します。


さらに30分、ボコボコの舗装路も尽きたところで車止めのゲートを越え、荒れた未舗装路を進んでいきます。熊との遭遇を恐れつつうっそうとした森を駆け抜けると、少し開けた場所にちょこんと「鴨川源流」の立て札が現れました。ここからは自転車を置いて徒歩となります。すでに「チョロチョロ」といった感じに細くなった流れに沿って、足を滑らせたり、水たまりにはまったりしながら突き進むと、ついに目的地へ到達しました。


源流というと、岩場から雫が落ちていたり、窪地にコンコンと水が湧き出たりするイメージでしたが、やっとの思いでたどり着いたのは、溜まった落ち葉の間から水がしみ出しているだけの平凡な場所でした。そう、鴨川の「最初の一滴」にたどり着いた達成感はあるものの、ガッカリ感も否めないビミョーなゴール。


ちなみにこのツアーでは、電動アシスト付きの自転車を使用する予定なので、体力のない方でも大丈夫です。このビミョーな達成感を味わいたい方は、ぜひご参加ください(笑)。
