コラム

社長コラム
2025.06.10
行列嫌い
閑話休題ロゴ

 みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。

 私事で恐縮ですが、行列が大嫌いです。昔から高速道路の料金所(ETCレーンが設置される前ですね)や銀行のATM、スーパーのレジなどで行列に遭遇するたび、やさぐれていく心の様子がそのまま顔に出ていたそうです。これは今も変わらないので、普段からテーマパークを筆頭にインバウンドで溢れる各地の観光地、人気のラーメン店、そしてみどりの窓口には、極力近寄らないよう心掛けております。

万博パビリオン界隈の「二大巨頭」、フランス館とアメリカ館の前の広場はまさに長蛇の列。平日でこれですから、休日はいったいどんな様子なのでしょう。くわばら、くわばら。

 そんな行列嫌いが最も忌避するのが「EXPO 2025 大阪・関西万博」。ところが徐々に明るいニュースがメディアで取り上げられると、なんとなく心がざわつきます。「やっぱり一回くらいは会場へ…」「でもチケット買うのもメンドくさい」「行くとしてもGW前の空いている間に…」と逡巡し始めるともういけません。そんな折、ある媒体社から「合同研修会」という名目で万博へご招待してもらえることになりました。しめしめ。

開業当初はこうなると1ミリも想像できなかった、大阪メトロ夢洲駅のコンコース。
東ゲートへの大階段もこの有様。〝つじさんの地図〟だけでなく、広告も見てくださいね。

 とはいえ、何もせずに当日を迎えてしまうと、パビリオンはおろか会場への入場すらままならない。今回はチケットのみの支給なので、すべてが自己責任。事前にすべきは予約ですよ、と言われてもノウハウが皆無なので手も足も出せません。ところが捨てる神あれば拾う神あり。万博に何度も足を運んだことのある方から、「当日ご一緒しませんか?」とのお言葉を頂戴しました。

来場者の安全を見守る「AEDタイアップ広告」。万博後の身の振り方は… また考えましょう。
スムーズな入場のため、手荷物検査場ではボトルや電子機器類はカバンから出してお手元に。

 迎えた当日は、見事な日本晴。それゆえ、容赦なく11時の入場待ちの行列にお日様が照りつけます。10時半に並び始めて、手荷物検査を終えて入場したのが11時10分。すでにこの時点で行列嫌いの虫が騒ぎ出し、これ以上並びたくなくなったので、すっと入れそうな(←失礼)UAEパビリオンへ。ガラス張りの解放感ある建物には、ナツメヤシを使った柱が林立し、円形のスクリーンに映し出される砂漠の風景と相まって、アラブの世界観を充分に満喫できます。もちろん、行ったことはないですが。

すでに万博のレガシー(遺産)リスト入りした大屋根リングは、リアルで見ると迫力満点!!
UAE館の特徴的なサイネージと、かすかに漂う乳香の香りが異国情緒を醸します。

 次にすぐ近くのポルトガル館へ向かうと、待ち時間は約40分。かつて虎ノ門にあった、立ち食い蕎麦の超人気店「港屋」(https://bunshun.jp/articles/-/11117)の行列よりはマシか…と並ぶと、直射日光がメッシュ状の日よけを貫き脳天を直撃します。頭頂部を気にしつつ待つこと30分で中に入ると、「生命と海」がコンセプトの映像とメッセージに圧倒され、炎天下での苦行(行列)のことはすっかり忘れてしまいました。余韻に浸りつつ次の部屋に足を進めると、なんとそこはお土産物売場と出口。こうなると後戻りはできません。30分並んで滞在5分という、かかりつけ医の診療を彷彿とさせる体験になりました。

隈研吾氏が設計したポルトガル館。海洋保護のメッセージを体現するため、環境に配慮した素材を使った建物は存在感抜群。
コロンビア館で不定期に販売される「世界で最も美味しい料理ランキング1位」のレチョナ。これがビールと♡

 そして、唯一事前予約が叶った三菱未来館。安心感と優越感に満ち溢れてパビリオンに向かうと、建物下の指定場所では順番待ちの行列が。「結局並ぶんかい!」と激しくツッコミながら、30分ほどその場で待機して中に入ります。しかし腰と膝が痛くて映像の世界に没入できない。フラフラの状態で次の部屋へ移動すると、そこは待ち焦がれた座席のあるシアタールーム。ホッとしつつ「いのちの始まりと未来」について想像力を掻き立てる映像を拝見しました。ここはこども(孫?)と一緒に体験してもらいたい内容ですね。ただし、1/3くらいは睡魔に襲われ意識を失っていましたが。

大屋根リングの上部は、ただの通路ではなく植栽までしつらえた本格的な歩道でした。
今回の目玉のひとつ、三菱未来館。じっと眺めていると平衡感覚を失いかけるのは、私だけ?

 今回は「視察」の一環なので、会場の退出時間が16時と決められています。なので、最後は賭けに出ました。それは人気のアメリカ館への突入作戦。この時点で一般の列は2時間待ちでしたが、我々のガイド役は「英語ツアー」への参加という裏技を繰り出します。ところがこの行列は、一般のツアーや車いすの優先入場の行列が定期的に動くのに対して、まったく動かない。「これはハズレか…」と後悔し始めた頃に順番が回ってきました。とはいえ、トータルの待ち時間は約1時間だったので良しとしましょう。ギシギシと軋む膝を引きずり館内へ。すると、展示のクオリティがこれまでとひと味違う。今の大統領がのたまっているのとまったく正反対のメッセージが、いろんな人々の映像を交えて流されつつ、ひとつのストーリーに収斂(しゅうれん)する。なんだかんだ言ってもさすがアメリカ。お見事でした。

偉容を誇るアメリカ館。巨大なサイネージも迫力満点。しかし行列嫌いには苦痛を通り越してもはや…
見応えたっぷりな館内は「自由の国」だけに撮影も(たぶん)自由。この映像もサプライズがあって大満足。

 これまで万博経験者が口を揃えて「もう一回行きたい」、と言うのを半信半疑で聞いてきましたが、実際に体験するとさもありなん。しかし行列嫌いにとっては、かなりハードルが高いと申し上げておきます。しかも、これから梅雨と夏本番を迎えます。行列以上に暑さ嫌いの私にとっては、〝もう勘弁して〟状態です。それでも「行く!」という方は、炎天下での行列対策として日傘、持ち運びできる小型の折り畳みタイプのイス、迅速に水分補給が可能な水筒、身体を冷やすネッククーラーやベスト型空調服といったフル装備が必要かと。これから万博へ向かう皆さま、この格好のせいでお隣で始まった大阪IR建設工事へ誘導されぬよう、気をつけて行ってらっしゃい(笑)。

駅の広告にもご注目! 両側の壁を埋め尽くす「夢洲ドリームゲートシート」は、全4枠あって7ヵ月間のお値段は合計1億9000万円也(製作・取付撤去費含む)。 万博効果、恐るべし。