みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
早慶レガッタなどでご存じの「ボート競技」という名称が、「ローイング」に変わりました。これは、国際ボート連盟が2020年に「World Rowing」という名称を使い始めたことから、日本でも2023年の1月から競技名を「ローイング」に改めたからです。同時に日本ボート協会も日本ローイング協会に名称を変更したところ、思わぬことに協会がこれまで悩まされてきた「競艇」のレース結果や、配当金を問い合わせる間違い電話が明らかに減ったそうです。ギャンブラーの皆さま、お電話は相手と番号をしっかり確認してからお願いします。
わが母校のボート部も漕艇部に変わって始まった今シーズン、OBの私たちは初めての公式戦に出場しました。参加したのは漕手4人の合計年齢が160歳以上のクラス。試しにわがクルーの年齢を足し合わせると、なんと238歳。平均年齢59.5歳の〝ほぼ還暦クルー〟での参戦となりました。出艇前に他のクルーを横目で眺めると、案の定「若いモン」がいるわいるわ。まあ、彼らとまともに張り合っても仕方がないので、マイペースで参りましょう。
今回のレースは、500mの距離を2本漕いでその合計タイムで順位を決めるルール。つまり1本目でリードしていても、タイム差が少なければ2本目で逆転される可能性があるので、ひたすら全力で漕がねばなりません。しかも、使うのはナックルフォアという初心者向けの艇。これは転覆などの事故を防ぐために、艇自体が頑丈な構造になっていて漕いでも重くて進まない。まさに体力勝負!のこの艇を使うレースはおおむね300mの短距離で競うのですが、今回は500mと長い距離を漕がねばなりません。そうなると〝ほぼ還〟の持つ、限られた体力のマネジメントが勝敗を決します。
まずは1本目のスタート。整調(せいちょう)という、4人の漕ぎ手の一番前でリズムやペースをつくる役割を拝命した私は、スタートのコールと同時に力強くかつ慎重に漕ぎ出します。しばらく漕ぎ進めると、一番の強敵である隣のクルーに頭ひとつ出られているものの、意外に差がない。「これは、ひょっとしたらいけるかも…」と舞い上がった私はもう止まらない。そのままハイピッチで漕ぎ続け、気合は十分でも体力の蓄えわずかな〝ほぼ還〟クルーを、一瞬で電池切れに追いやってしまいました。こうなると先行艇には離されるわ、後続艇には迫られるわと、まさにてんやわんや。結局、なんとか逃げ切って2位でゴールしました。
この1件であっさり整調のポジションを解任された私は、2本目はコックスという舵取り役へ異動。一見、声を出すだけで楽そうに見えるコックスですが、実は結構大変なのです。なにせ巨大な肉塊の如き漕手たちが、年甲斐もなく全力で漕ぎ倒すため、艇はなかなか真っ直ぐに進まない。両舷を漕ぐそれぞれの力は違う上に、水流や風の影響を受けて艇は左右に振られます。その状態で幅約13mのレーンから、長さが約3.5mある左右のオールの先端がお隣へはみ出さぬよう、まさにミリ単位で舵を切らねばなりません。同時に他艇と自艇の位置関係を常に把握し、相手のペースの変化を見ながら、勝負どころでスパートをかける、といった戦略的な能力も求められます。
そうこうしているうちに、2本目のスタート。今回はうまくタイミングが合って絶好のスタートを切りましたが、ライバルたちはそれ以上の出来栄えで先行します。スタートダッシュのあと、ピッチを落ち着かせた時点でわがクルーは3位。トップとはかなり差があるのでこの時点で追うのは諦め、確実に2位を狙う戦略に切り替えます。こんな時にはポジティブなコールが必要なので、「前と詰まってきた!」とか「コンスタント(いわゆる定速走行のこと)伸びてるよ!!」という具合に漕手を「ほめて伸ばし」ます。その甲斐あって、300m地点は先行艇をかわして2位で通過。一気にラストスパートを入れてそのままゴール!2位が確定しました。
レースが終われば、恒例の猛反省会。ペース配分を失敗した1本目の所業をなじられ、ナイスなレース運びと自画自賛していた2本目は、「コールの内容が鬼畜い」「逆風でしんどいのに(スパート)長い」「ゴールした後は死ぬかと思った」と非難GoGo!(笑)。舵取り役のお仕事は、艇であろうが会社であろうがやはり難しい。こんな感じで明るく楽しい罵り合いがあちらこちらで勃発する中、猛反省会はいつまでも続くのでした。