コラム

社長コラム
2025.03.11
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 みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。

 世の中にはいろんな壁があります。いま目の前にある建物の壁から、隣地との境界の壁、城郭や国境の頑丈な壁といった「物理的な壁」と、外国人との間に存在する文化や言語の壁、年齢の壁やジェンダーの壁、自分の持つ固定概念の壁など「社会的・精神的な壁」、デジタル時代となって誕生したファイアウォールという「サイバー空間限定の壁」などがあります。

私たちの年代で「壁」といえばこのベルリンの壁。東西ドイツの国境が開かれたのは1989年の11月。平成がスタートしたこの年、まだ学生だった私にとっても衝撃のニュースでした。

 そんな中から、今回紹介するのは「30kmの壁」。フルマラソン業界でまことしやかに語り継がれる都市伝説です。これは42.195kmのフルマラソンを走るランナーが、30km過ぎの地点から急にペースダウンをしたり、走れなくなったり、最悪は動けなくなる現象のことです。先日の東京マラソンでも、順調にかっ飛ばしていた青山学院大の太田蒼生選手が急に失速し、その後棄権したのが30km過ぎ。そう「30kmの壁」は、アマチュアだけでなく本格的に競技するアスリートにも立ち塞がる厚い壁なのです。

今年も懲りずにエントリーした京都マラソン。ハーフまではプラン通りの走りだったのですが…。
「QRコードを表示してくださ~い」間違えてPayPayの「バーコード」を表示したのは私だけ?

 その「壁」が出現する原因は、体内に蓄えられたエネルギー(糖分やグリコーゲン)の枯渇、そして疲労による筋肉の反応低下の2つとされます。一般的にフルマラソンを走るのに必要なカロリーは、約2500~3000kcal。これは、人間が1日の活動で消費するエネルギーとほぼ同じです。一方、人間の体には最大で約2000kcal分の糖質(グリコーゲン及びグルコース)を蓄えることができ、これが走る時のエネルギー源になります。この体内のエネルギーが、走ることで一定量が失われると低血糖の状態、つまりガス欠になります。この状態に陥るのがおおむね30km過ぎなので、こう呼ばれます。

 もうひとつは、疲労した筋肉が乳酸を貯め込んだり、発汗とともに塩分やミネラルが失われたりして、筋肉の動きに影響が出る場合です。こうなると「走りたい!」という意思に反して足が鉛のように重くなったり、筋線維が疲労、断裂することによる痛みやけいれんといった症状が襲ってきます。その結果、立往生するランナーが多発するのが、やはり30km過ぎなのです。

私の持ち込んだ〝4種の神器〟もちろんドーピングに抵触しないブツばかりです。足つり対策には右端のマグネシウムが効く、と言われたので購入しました。その結果は…。

 さらに近年の研究では、過酷な運動による身体への影響を抑えるために、脳が運動を抑制することもわかってきました。筋肉や臓器から「もう勘弁して」とか「止まらないと死ぬ」みたいな悲鳴が上がり出すと、脳が勝手にブレーキをかけるそうです。常に限界に挑戦する一流のアスリートだからこそ、身体どころか生命を守るべくこのような「命を守る壁」が現れるのでしょう。

人様にお見せできるのは、かろうじて4時間を切った6年前のこの記録(汗)。私は燃費が悪いのか3,491kcalも消費しております。こうなると手早くカロリー補給ができる「オリ生」の出番です。

 そこまでのレベルにはほど遠い私の場合は、しんどくなると自分自身でつくりだす「ヘタレの壁」が行く手を阻みます。昨年の京都マラソンでは、お約束の30km地点で太もも裏の筋肉がつりました。こうなると脳は「これ以上無理したらケガするし」とか「ここでやめたら地下鉄の駅が近いで」などと甘言を弄して走ることを止めようとします。今年は30km過ぎに両足のほぼすべての指がつるという、前代未聞の症状に襲われました。こんな状況で頭の中に〝リタイア〟という言葉が浮かんでくるのが、まさに自分でこしらえた「ヘタレの壁」。なんとか呪縛を解いて完走(完歩?)しましたが、この時は脳の中で「もうええでしょう」とピエール瀧さんが囁いた気がします(笑)。

こんなのもありました「バカの壁」。そう、壁は自分で勝手に作っているだけなのです。
ネトフリで話題になった「地面師たち」。ドラマでは設定がだいぶ変えられてました。ね、辰さん。

 交通・屋外広告を取り扱う私たちは、駅やビルの「壁」にメディアとしての価値を与えることがミッションです。そんな会社の代表者が、自分の脳で勝手に創り出した「壁」に行く手を阻まれるとは、まだまだ修行が足りません。

1月19日に開業した夢洲(ゆめしま)駅のコンコース。大阪・関西万博が開催すれば、たくさんの人々をお迎えします。そしてこの高さ3m幅55mの〝電子の壁〟は、まさに迫力満点!