みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
大阪市中央区上汐1丁目4-8という住所を持つ風光社グループ。町名の上汐(うえしお)は知名度が低く、大阪の人にも「あげしお?」と読まれるなど、住所だけでは実際の場所がイメージされにくいことが悩みであります。そのため、「上汐どこ?」が点灯している方にはこう言います。「ウチの会社はタニキュウにあります」と。漢字で書くと谷九。これは谷町九丁目の略称ですね。すると「ああ、谷町筋の」とか「上町台地のあたりやな」てな感じで、相手が大阪人だとたいがいこれで通じます。
大阪城を北端に南へ約11km、東西2~3kmの幅で隆起している土地を上町台地と呼びます。私たちの会社のある上汐は、この台地のちょうど背骨の部分にあって西側には標高差約20mの急坂があり、大昔はこの坂の下った所が大阪湾の波打ち際だったそうです。九州の太宰府へ左遷される途中だった菅原道真がここで引潮を待ったという故事にちなんで、この一帯は「上汐」と呼ばれるようになりました。
また、この上町台地は夕日の名所として知られていたため、浄土信仰が広まった平安末期から夕日を眺めて西方浄土を観想する「日想観(じっそうかん・にっそうかん)」の修行の場としても賑わい、神社やお寺が建てられました。しかも大阪城を築城した豊臣秀吉が、城の南側の防御が手薄と見抜いて大阪中のお寺をこの台地に集めて防壁代わりにしたため(←罰当たり)、上町台地の界隈にはみっしりと寺院が密集しております。たまに路地裏を歩くと、長い壁と瓦屋根、そして境内にうっそうと茂る巨木や、区画整理で取り残されたお寺の古木が道の真ん中に出現したりと見飽きません。が、基本的には同じような風景が続くため、ボーっと歩いていると自分の位置を見失なったりします。弊社へお越しになるお客様が迷子になるケースが多いのも、このせいかもしれません。
そう、迷子になる原因に最寄りの谷町九丁目駅の構造も関係しています。地下鉄谷町線と千日前線が接続する交差駅で、地下通路を介して近鉄大阪上本町駅とつながっているこの駅は、通路や階段の配置が複雑怪奇。地下から地上に出るには、地下道の喫茶店や老舗のジャズバー、怪しげなテナント、さらにはオカルティな出来事があった階段という多様なアトラクションに満ちていて、ディープなダンジョン感を味わうことができます。で、そんなことに気を取られていると地上に出た時にはもれなく方向感覚を失うわけです。
もし弊社と真逆の方向へ上がると、同じ上町台地でもまったく別の光景が目に入ります。こちらは生玉というエリアとなりますが、なんと上汐や谷町をさらに上回る日本最大級の寺院の密集地帯。さぞや宗教都市的な景観と雰囲気が、と思いきやここでは歴史ある神社や寺院と隣接あるいは折り重なるかのように、いわゆるファッションホテルが林立しています。これは明治の神仏分離と廃仏毀釈に伴い、廃された社僧屋敷や周辺にあった茶屋の跡地、そして昭和の戦災で焼失し移転した寺院の土地が切り売りされて、こうなってしまったそうです。
古くは港である難波津が置かれたり、織田信長の石山本願寺攻めや徳川家康による大阪冬・夏の陣の激戦地であるなど、交通や軍事上の要衝だった上町台地。現代では夕日を浴びた荘厳な寺社建築と、きらびやかなサインに照らし出されるホテル街が渾然一体となり、半聖半俗的な不思議な景観に出会える〝映えスポット〟に。ここに来ると、大昔に社会の授業で習った「ゆりかごから墓場まで」という言葉がよみがえってくるのは私だけでしょうか(意味はまったく違いますが)。