みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
昨年6月に開催された広告資機材の展示会「SIGNEXPO(サインエキスポ)」。この会場の一角にあるドローンの体験コーナーに足を運んだことから話は始まります。デモ飛行を勧められて実際に操縦してみたところ実に面白い。しかも私たちの業界で課題になっている、老朽化した看板の点検にも使用できる(あくまでも目視ですが)との説明を受け、俄然興味が湧いてきました。
以前は資格なしでも飛ばすことができたドローン(無人航空機)ですが、2022年12月から国家資格が制定され、重量100gを超える機体はすべて規制の対象になりました。業務で使うとなれば、やはり資格は必須。これも何かのご縁とお受験を決意しました。今回狙うのは二等無人航空機操縦士の資格。最上位にある一等は、第三者の上空を飛ばせるという最もリスクの高い飛行が可能になる資格で、物流業務に携わる場合に必要となります。ちなみに大阪・関西万博の目玉でもある「空飛ぶクルマ」の操縦資格は、どうなるかまだ決まっていないそうです。なにせ、人を乗せて運ぶ訳ですからね。
この資格を取るには、まず国交省認定の民間管理団体が実施する2日間の講習と、修了試験を受けねばなりません。講習は法律や規制、飛行に必要なシステムや機体の構造、リスク管理などの学科と、ドローンを飛行させて操縦技能を磨く実技の二本立てとなっています。修了試験は机上・口述・実技の3点セットで行われ、「減点式採点法」で判定されます。受験者はあらかじめ100点の持ち点が与えられますが、審査でミスをするたびに減点され、試験終了時点に70点を下回らなければ合格というシステム。ほめられて伸びるタイプの私にとって、減点式は心理的にとてもハードルが高い採点法なのであります。
〝伊吹おろし〟が吹き荒れる極寒の地で1日半の講習を終えたら、いよいよ最大の難関である修了審査。名前を呼ばれたら試験会場であるフットサルコートへ単身乗り込み、緊張する間もなく試験開始。「上空よし!前よし!後ろよし!右よし!…」と順番に安全確認後、プロペラを始動。「離陸します」と宣言し指定の高度まで機体を上昇させ、その場で数秒間のホバリング(空中での静止状態の維持)を行います。
ここからお題の通りに機体を動かします。所定のホバリング位置を外れると減点、コース境界のラインに触れると減点、パイロンの直上を通過できないと減点、前進・後退・回転中にギクシャクしたら減点、着陸時に機体がヘリパッドからはみ出ても減点、という減点地獄。しかも屋内とはいえ、わずかな風の影響で機体が流されるため、常に繊細なスティック操作が求められます。少しでもラフな操作すると、機体は急加速や急旋回し始めそのままコントロール不能になりかねない。一瞬たりとも気が抜けないため、肩の筋肉は硬直するわ、両手の親指はプルプル震え出すわ、生きた心地がまったくしません。
試験にかかる時間はトータルで40分ほど。その後、試験官の皆さんがヒソヒソ声を潜めながら書類になにやら書き込みます。ややあって名前を呼ばれ、直立不動の姿勢をとると「細川さん合格です」と。その後、いくつかコメントをいただきましたが、すでに喜びで舞い上がってウワの空。やったー!!
もちろんこれで終わりではありません。そう、お次は学科試験。これは各都道府県の国交省指定試験機関で受験します。学んだ法律やその他の規則などの記憶が劣化しないうちに、とネットでポチっと申し込み。試験は会場のパソコンを使って三肢択一式(50問)を30分の制限時間内に解いていきます。合格ラインは80%以上。事前にネットでサンプル試験を受けてみると、なんとかギリ合格ライン。ナメてると痛い目に遭いそうなので気合を入れ直して勉強し、こちらも無事に合格しました。
さて、運転免許証と同様に学科試験に通ったらすぐ免許交付、と思いきやそうは問屋(国土交通省)が卸さない。国交省の「ドローン情報基盤システム2.0(通称:DIPS2.0)」に講習修了証や技能証明証、学科試験合格証や身体検査…などの情報をアップして申請し、何度もメールでやり取りをしながら手続きを進める必要があります。ちなみに、この原稿執筆時点ではまだ手続きは完了しておりません。
学科試験の当日、免許証用写真のために気合いを入れて服装と髪型を整えていた、あの努力はいったい…。