コラム

社長コラム
2024.02.07
勝ちだるま
閑話休題ロゴ

 みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。

 大阪の中心部から北へ真っすぐ進むと、ぐんぐん迫ってくるのは府北部の東西に広がる北摂山地。この山地はおおむね標高300m~600mくらいの山が多く、ハイキングコースとして人気があります。その中のひとつ、大阪府箕面市にある最勝ヶ峰(さいしょうがみね)。山頂に桓武天皇の兄、開成皇子の墓所があるこの山の中腹には、8万坪にも及ぶ境内を持つ西国三十三所の第二十三番札所、勝尾寺(かつおうじ)があります。

最寄り駅となる北大阪急行箕面萱野駅(2024年3月延伸開業)から山門までは標高差300m、7.6kmの道のりで徒歩1時間30分!
右手には池に浮かぶ弁天堂、左手はお清め橋。中央奥に見える屋根が本堂です。周囲には凛とした空気が満ちております。

 約1300年前の神亀4(727)年、摂津国司・藤原致房の子息である善仲・善算兄弟(双子)がより厳しい修行を求め、辿り着いたのがこの地でした。山岳信仰の拠点として始まったこの寺は、清和天皇の病気平癒の祈祷に成功したことから「勝王」の称号を得るなど、当時の高貴な身分の人々の間で評判となりました。後に「王」という字を使うことを控え、勝尾寺とその名をあらためてからは源氏をはじめ足利氏や豊臣氏らが戦勝祈願に訪れるようになり、以降は勝運信仰の寺として今日に至ります。

勝尾寺の名物〝だるまみくじ〟。体内に仕込まれたおみくじを抜いたあとの抜け殻?が境内あちらこちらに配備されています。
確かに何体のだるまが鎮座されているか、気になるところではありますが…。知らんのかい!

 こちらで有名なのは「勝ちだるま」。勝尾寺における「勝つ」とは他人を打ち負かすことでなく、自分自身と向き合いながら物事を達成することであり、〝七転び八起き〟の精神を尊びます。また、だるまと言えば達磨大師。手足を腐らせるまで9年もの間壁に向かって座禅し続けた、という逸話を持つ禅宗の始祖がモデルです。このだるまと勝尾寺の「勝つ」をミックスしたのが「勝ちだるま」。訪れる善男善女は皆この「勝ちだるま」に願いを込めて持ち帰ります。

 今回訪れたのは、かつて願(がん)をかけた「勝ちだるま」を奉納するため。もう5年も前の2018年6月、弊社のレクリエーションでこの地を訪問し、だるまさんに「願」をかけて持ち帰りました。ところがその時ににかけた「願」が、恥ずかしながらハードル高すぎてなかなか達成できない。市況や世の中の情勢に翻弄されながら、なんとか「願」が成就したのが2023年の暮れ。ようやくだるまさんをふるさとへお返しできるようになりました。

だるまさんの会議中。ですが、なんとなく「はかりごと」とか「奸計」といった雰囲気が漂います。目付きがコワイし。
願いを成就させただるまさんが安置される奉納棚。後からどんどん積み上げられるので、すぐに埋没してしまいます。

 2月初旬に勝尾寺を訪れると、気温は5℃。さすがに雪は見当たらないものの、手袋を忘れたためにソッコーで手がかじかみます。遠くに大阪の摩天楼を眺めつつ、境内のいたる所で身を寄せ合う小さなだるまさん達の視線を感じながら、階段を上って奉納棚へ。境内に設置されたスピーカーから読経が流れる中、厳かな気持ちでだるまさんを奉納しました。本当に長い間お引き留めしました(合掌)。

無事お戻りになっただるま。奉納時に「南無大慈大悲観世音菩薩(なむだいじだいひかんぜおんぼさつ)」と3回唱えます。
少し視線を逸らすと、あっという間にMyだるまさんを見失います。「集合体」に恐怖を覚える方はスルーしてください。

 そして〝2代目〟のだるまさんを購入すべく売店へ。棚にずらりと並ぶのは、大小様々なサイズのだるまさん。店員さんから「どの子にします?」と聞かれて、「子、なんですね」と戸惑いつつ〝末広がり〟を連想させる「8号」サイズのだるまさんを購入。お作法の通り、まず備え付けの油性マジックペンで「願」を書き、念を込めます。そのあと薫香という、お線香の煙をだるまさんに染み込ませる儀式を経て、右目を入れます。割と難しいのがこの目入れ。とはいえ2回目なので、前回よりは上手に目を描くことができました。恐らく願いは早くに叶うことでしょう(個人の思い込みです)。

慶長年間(1596年-1615年)に豊臣秀頼によって再建された本堂。安置される千手観世音菩薩立像は源平時代に消失したため、現存するのは江戸時代の作。
勝ちだるまの目入れには、きちんとした作法がございます。一部手順を誤りましたが、やり直したので大丈夫かと。

土産物売り場はだるま一色!このアメコミ風デザインのタオル、ぶっ飛び感にあふれております。
サウナハットとTシャツ。こんな格好のヒトとサウナで出くわしたら、思わず目を逸らすかも。

 達磨大師が座禅を組んだ姿を模倣して作られただるまさん。中国から室町時代に日本へ伝わり、江戸時代におもりを内蔵した「起き上がり小法師」への仕様変更を受けて現在に至ります。いくら転んでも起き上がる〝七転び八起き〟。年代的に「あしたのジョー」を連想しますが、達磨大師の困難にくじけず耐え抜いたお姿を想像しながら、「願」が成就するよう不撓不屈(ふとうふくつ)の精神で頑張ります。…もちろん、燃え尽きて灰にならぬ程度に、ですがね。

無事に奉納を終えるとすきっ腹がグウ。急いで山から下りてランチタイム。阪急豊中駅からほど近いお蕎麦屋さんへ。
心底冷え切ったので〝漆黒の鴨なんば〟を注文。自家製薬味を添えていただきます。おいしゅうございました。