みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
突然ですが、私は水泳ができません。もちろんまったくのカナヅチではなく、とりあえず浮くことくらいはできます。が〝息継ぎ〟ができない。つまり息の続く限り泳ぐことができても、呼吸のタイミングで足をついて立ち上がり、顔を水面から確実に露出させなければジ・エンド。それゆえ海や川、湖で遊ぶ時は、常に足が着く場所にいるか、浮き具を使用することが必須なのです。
ところが水泳が苦手と知っているにも関わらず、私にトライアスロンを勧める厄介なお友達がいます。ラテン語の3を意味する「トライ」と、競技を意味する「アスロン」を組み合わせたこのスポーツは、スイム3.8km、バイク(自転車)180km、ラン42.195kmというとんでもない距離でタイムを競うアイアンマン(鉄人)レースや、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmのオリンピックディスタンスなどいくつかの距離設定があります。もちろん興味がないことはないですが(←どっちやねん)いくら入念に準備を重ねても、最初のスイムでリタイアすることが100%わかっているだけに、まったく食指が動きませんでした。
そんなある日、ボート部のOBで現在同部監督を務めるナカムラ先輩から「10月に琵琶湖で開催される守山トライアスロンは、リレー部門があるから参加しない?」と。大会概要を調べてみると、今回の距離はスイム1.5km、バイク80km、ラン20km。バイクで走るのは琵琶湖沿いのほぼ平坦な周回コース。ヒルクライム(坂登り)好きの私との相性はイマイチですが、贅沢は言ってられません。そう、スイムとラン抜きとはいえトライアスロンの一部分に参戦すれば〝食わず嫌い〟と後ろ指をさされることもない。快諾したと同時に、同じくボート部の後輩のサトー君にスイム担当の白羽の矢を押し付け、チームを編成しました。
予想外の大雨の中迎えた大会当日。元気なサトー君は「30分を目標に戻ります!」とスイムのスタート地点へ。普段市民プールで鍛えている彼は、警備会社に勤めていることもあり時間にはうるさい。あれよれという間に、ほぼ予告通りのタイムで戻って来ました。バトン代わりのアンクルバンドを受け取り、ラン担当のナカムラ監督へ「2時間半を目標に戻ります!」と宣言してスタート。
ところが、走り出すと雨は止むどころかどんどん強くなる。痛いくらいの雨粒と前を走るバイクが巻き上げる大量のしぶきが、全身を容赦なく襲うため視界は悪い、ブレーキは利かない、脚は冷えて回らないの三重苦。ストレートが基本とはいえ、極端に狭い部分やきついコーナーがふんだんに散りばめられた周回コースでは、一瞬の判断ミスがトラブルに直結します。攻めた走りで転倒しては元も子もないので、安全運転を心がけることにしました。
後半に入ると、雨が弱まったおかげで身体が温まり筋肉とやる気がみるみる活性化。ペースアップして少しずつ順位を上げていきます。が、周囲のほとんどはソロでエントリーしている選手たちで、バイクのみ参加の私とでは背負っているものが違います。なんとなく後ろめたい気分で競り合っていると、いつの間にやらオーバーペース。結局バテバテ状態でフィニッシュし、アンクルバンドをアンカーのナカムラ監督へ委ねます。
この頃には雨は上がり、薄日もさす絶好のコンディション。フルマラソン50回以上の出場で、すべてサブフォー(4時間以内のタイム)を達成している監督の走りは凄まじく、あっという間に視界から消え去ります。その後も余裕の表情で周回を重ねつつ、20kmを走り切って軽やかにゴールイン。発表されたリザルトによると、リレー部門の20チーム中なんと8位。8位までが入賞なので、初参加としては上々の結果でした。
とはいえバイクパートだけの参加なのに、3種目をこなすソロの選手にぶち抜かれまくった今回の経験はまさに黒歴史。でもリベンジしますか、と言われるとバイクだけで勝負するのは何か違う。どうせなら同じ条件、つまり3種目で挑戦すべきでしょう…などと考え出すと、肝心なことを思い出しました。そう、トライアスロンに誘われたらまずこう伝えねば。
「私、水泳できないので」