コラム

社長コラム
2022.11.09
自然といきもの
閑話休題ロゴ

 みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。

 なぜか私は昔からよく虫にたかられます。山に入ればヤブ蚊はもとよりアブ、ハチ、ブヨ(ブユ)などにたかられ放題。長袖シャツやレッグカバーを着用し虫よけスプレーなどでガードしても、繊維の隙間や塗り残した肌を狙ってチクリとやられます。これが痛いの痒いの。

 そんな私が先日、ある場所で新たな生き物にこっぴどく襲われてしまいました。それは屋久島と並んで日本一の降水量を誇る、三重県の秘境大杉谷。伊勢湾に流れ込む宮川の上流に沿って、近畿百名山の大台ケ原まで大自然を満喫できる素晴らしいルート、なんですがそこで阿鼻叫喚の地獄絵図を見るハメに。

 その日は快晴の予報だったにもかかわらず、登山道近くの駐車場に着くと小雨がパラつく嫌なお天気。このルートはほぼ岩と石ころだらけ、なので濡れると滑りやすくて細心の注意を払わねばなりません。初めて足を踏み入れる私がひとり気合を入れていると、「そういえば1か月ほど前の雨の日、この先で滑落事故があったらしいから気をつけようね」とリーダーの注意喚起。そんな話はまったく聞いておりません。

登山道へ入った直後にこの状態。入口の看板に「トレイルランニング禁止!」とありましたが、こんなところを走るのは余程の命知らず。

 実際に歩き始めると、岩盤をくり抜いて作った道に転落防止の鎖が打ち込まれ、目も眩むような絶壁をトレースしたり、両手を使わないと登れないガレ場を越えたりと、ほぼプロ仕様のルート。悪戦苦闘しながら足を進めると、出会うのはまさに息を呑む絶景ポイント。自然の造形の雄大さに心を打たれ、これまでの苦労が報われた気持ちで撮影に興じていると、いつしか足元には危機が迫っていました。

「通報!」と仰られても通報先の山小屋まで徒歩90分。もちろんケータイは通じない📱
絵に描いたような〝へっぴり腰〟。こうなると、もはやハイキングではありません。

 突然同行者のひとりが「あっ」と声を上げる。何事かと覗き込むと、彼の脛には5mmくらいの黒い物体が点々と。そう、襲撃してきたのは蛭(ひる)。断りもなくヒトのカラダに取り付いて、黙って血をチュウチュウ吸い取る悪い奴らです。幸いなことに火で焙ったりせずともすぐに駆除できたのですが(無理に引きはがすと体がちぎれて頭部が皮膚に喰い込んだまま残ってしまいます)、傷口からは鮮血がダラリ。そう、奴らの唾液には血液の凝固を防ぐ酵素が入っていて、噛まれるといつまでも血が止まらないのです。

 そこで自分の足元に目を移すと、シューズの上に2匹が鎌首(?)をもたげて進撃中。ついでに長ズボンをまくり上げると脛にひい、ふう、みい…と別途4匹様が喰いつき中。しかも周囲の石コロの上には、続々と仲間が集結しており、まさに〝蛭祭り〟状態。雨で湿気が増えると活発になるのが彼らの習性。とにかくその場を離れ、たまたまザックに入っていたエアーサロンパスをシューズにたっぷり振りかけると、効果てきめん。

全行程のほぼ1/3まで来ました。
が、日帰り組の我々はここで折り返し。
食事がおいしく登山客に人気の「桃の木山の家」。週末はほぼ満室だそうです。

 エアサロのおかげで、その後はたいした襲撃を受けずに下山できたものの「蛭体験」は強烈でした。まさに〝美しい花には棘がある〟ではなく〝美しい自然には〇〇が潜む〟。それにしても大自然の力は侮れません。すでに半月以上経ちましたが、噛まれた傷跡はかさぶたのまま何か当たったりした拍子に猛烈な痒みが襲ってきます。いったいいつまで痒いのやら。

エメラルドグリーンに輝く水面と、鮮血に染まる足元のコントラストが(笑)。
次は(蛭が出にくい)晴れた日に来たいものです。