みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
今年も本格的に夏がやってきました。子供の頃は夏、と聞くだけで心が浮き立ったものですが、歳を重ねるとそうはいきません。ひたすら酷暑を避けるべく、家を出たら日陰を求め、駅に着いたらエアコンの吹き出し口を探索し、電車が近づいたら車両に「弱冷車」のステッカーが貼られていないか凝視する。このまま地球温暖化が進んだら、いったいぜんたい〝ニッポンの夏〟はどうなるのでしょうか。
とはいえ海や山、お祭りや花火など心に残る風景がたくさん心に刷り込まれているのもこの季節。自身の記憶を辿ると、夏といえば畦道で虫やカエルを獲った田んぼの風景がリアルに甦ります。激しい直射日光と、稲穂を揺らす風、そして独特の青くさい匂い。視覚聴覚嗅覚のすべてに訴えかけてくる、これが私にとっての〝夏の原風景〟そのものなのです。
しかしこの田んぼの維持管理、といいますかコメづくりにはとてつもない手間と費用がかかります。ざっくりとその手間を書き連ねると 1. 播種(はしゅ:種蒔き)2. 代掻き(しろかき:田に水を入れた状態で、土の塊を細かく砕き平にする作業)3. 田植え 4. 刈り取り&脱穀 5. 乾燥 6. 籾摺り となります。もちろん間に追肥や草刈りなどの作業が必要なのは言うまでもありません。そして各工程にはそれぞれ専用の農業機械が必要で、またこれがお高いのなんの。特に大型機械のお値段は、ベンツやレクサス並みと言っても過言ではございません。
これが工場の機械であれば、年間を通じて稼働させることで相対的に固定費(減価償却費)を下げることができますが、農機の場合は1シーズンに1回、実質1~2週間程度の稼働しか見込めない。つまり、普段は倉庫で眠るだけで何の利益も生まないどころか、逆に保管費用がかかります。さらに農機は土や埃、泥などにまみれるため、一度使うと入念なメンテナンスが必要に。そう、コメ農家は作業の面でもお金の面でも本当に大変なのです。
ただでさえ食糧自給率が低い日本において、主食のコメや野菜の生産を担う農家の方、つまり就農人口はずっと右肩下がり。これはコメの消費量が減少していることも無縁ではありません。パンや麺類を食べるのもいいのですが、世界の食糧事情を勘案するともう少しコメの消費量を増やし、輸入食料品の比率を抑えておきたいものです。そして、結果的に田んぼの風景=日本の原風景を次の世代に受け渡すことができればいいな、と。
お盆を過ぎると田んぼの稲穂は黄金色に輝き、早生(わせ)の刈り取りの時期となります。今年はイレギュラーな梅雨前線の動きのせいでやきもきしましたが、なんとか順調に育っているらしくひと安心。真っ白で瑞々しい新米が食卓に上る日を、いまから指折り数えて楽しみにしています。
「実るほど頭(こうべ)を垂れる稲穂かな」 詠み人知らず