みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。
福井県の若狭は、1400年ほど前の飛鳥・奈良から平安時代にかけて、皇室や朝廷に食材を提供してきた「御食国(みけつくに)」のひとつでした。その若狭から京都を結ぶ街道はいくつかあり、これらはすべて「鯖街道」と呼ばれています。主な街道を挙げると、湖西を通る西近江路、メインの若狭街道、峠をいくつも越える鞍馬街道(針畑峠越)、鴨川の源流付近を通る雲ケ畑街道、そして西の鯖街道と呼ばれる周山街道などがあります。
なかでも鞍馬街道は急峻な地形ゆえ、いまも昔の行商人が通った頃と同じ景色を体験できます。彼らが運んだのは若狭で獲れた鯖。この鯖という魚、ご存じの通り「鯖の生き腐れ」といわれるほど痛みが早い。福井の小浜から京都までは約80km。彼らの脚で丸1日かかる距離を、冷蔵設備のない時代に生のまま運ぶのは難しいため、塩漬けにすることに。すると運んでいる間に塩が馴染んで、京の都に着くころにはちょうどいい具合に仕上がったそうです。
そこで、この鯖街道をもっと知ってもらおう!と始まったのが「鯖街道ウルトラマラソン」。昔の人々が辿った道をランニングで踏破しよう、というとんでもないイベントです。ランニング好きのお友達が出るというので、ゴール地点で応援しようかと思っていると「このマラソン、ハーフの部もあるので細川さんも出るでしょ?40kmとちょいだし」とのお誘いが。フルマラソンとほぼ同じ距離をトレイルランニングか...としばらく悩んだものの、「走り終わってからのビールがウマい!」というひと言でエントリーすることにしました。
さてレース当日、我々はバスでスタート地点へ移動します。その車内でお友達がひと言「細川さん、ハーフだからって甘くみちゃいけない」。こないだまで「楽しんで走りましょうね💗」だったのに、ここでそれ言いますか?そのせいか荷馬車でゴトゴト運ばれる子牛を想像し、あのドナドナのメロディーが頭の中でリプレイされ続ける始末。
不安で胸が張り裂けそうになっている私を乗せたバスは、小一時間で安曇川沿いの梅ノ木地区へ到着。ここから少し歩いてスタート地点に向かいます。いざ着いてみると、やる気満々の強者(ツワモノ、に見える)ランナーが勢揃い。女子率も結構高く、大腿部にテープなんぞ巻いている皆さんはやはり強者ばかり(に見える)。
スタート地点に整列し、諸注意と記念撮影が済んだら400名が一斉にスタート。筋肉に塗るスプレーのニオイが流れる中、しばらく走って久多の集落に入ると最初のエイドステーション(補給所)。これを過ぎるといよいよ本番のトレイル区間へ。オグロ坂峠という、いかにも険しそうな峠に向かって壁のような斜面を登ります。順位ではなく完走を目指す、と決めているためペースはそこそこに抑えて景色を楽しむ。すると新緑が萌える山中を足元に注意しながら走っているうちに、カラダの奥深くが覚醒するような感覚が。これがいわゆる〝ランナーズハイ〟かも。ランニング中毒の方々は、こんな感覚を求めて走ってるんだろうなあ。
二つ目のピークである杉峠にもエイドステーションがあって、ちょいとひと息。ここは自転車のトレーニングで登ってくる場所なので、ここまで来ればあとは勝手知ったる峠道。ところが腕時計の距離計をよく見ると、ここまでの走行距離が20.5km。え、まだ半分しか走ってないんですか!?
ここからの下りは、できるだけ脚に負担がかからぬよう慎重に走ります。が、鞍馬まで降りてきた時点ですでに脚は〝売り切れ〟、つまりエネルギーが枯渇した状態に。頼みのランナーズハイもとっくに切れていて、ひたすら両脚の痛みをこらえつつ舗装路と賀茂川の河川敷を、ジョギング未満のスピードで走ります。何度か歩きそうになりますが、ここで歩いては男がすたる。泣きそうになりながらなんとか出町柳のゴールへ。自転車ならあっという間の距離を、4倍以上の時間をかけてようやくフィニッシュ。あーしんどかった。
入賞を狙っていたお友達は、2時間以上前にゴールしていて、ひとっ風呂浴びてからのお出迎え。用事がある彼とはここでお別れし、こちらは脚を引きずりつつ参加賞の「焼き鯖」を1本いただいてお家へ帰ります。シャワーを浴びてテーブルに座ってさあビール!のはずでしたが、あまりにも疲れていてそのまま泥のような眠りにハマってしまいました。そりゃ山道を5時間半も走ったのですから、無事なわけがありません。それにしても、なにが「走り終わってからのビールがウマい」やねん(怒)。まあ、しばらく寝たら元気になってしっかり飲みましたけどね🍺。