コラム

社長コラム
2022.05.10
講演会
閑話休題ロゴ

 みなさまこんにちは。風光社グループ代表の細川です。

 先日、お知り合いの社長(大阪の交通広告代理店さん)に勧められた講演会に参加しました。お話しされるのは西亀真(にしかめまこと)さん。普段は愛称「カメちゃん」で通しておられる盲目のセラピスト。何年か前に出版された本を読んだ、という一方的なご縁があって(笑)、ご本人に会えるのを楽しみに足を運びました。

 そこそこ大きな会場ですが、中に入ると大入り満員の大盛況。しかも、土曜日にも関わらず在阪の媒体社や同業者のお偉いさんなど、業界の結構な顔ぶれの皆さんが揃っておられて二度ビックリ。恐らく主催する皆さんがあちこち声をかけられたおかげでしょうが、これだけの方々が今回の講演に興味を持っていることと、主催者の動員力に驚かされました。

 さて、もともと大阪の百貨店でシステムエンジニアのお仕事をしていた講師のカメちゃんは、目の難病である「網膜色素変性症」を突然発症し、ゆっくりと視力・視界を失っていくという、想像を絶する苦難に遭った方です。このあたり経緯は著書に詳しく記されているのですが、もし自分だったらこんな風に現実と向き合うことができるだろうか、と思わず考えさせられる内容になっています。

柔らかなイメージのタイトルですが、涙が止まらないシビアな部分もあります。私は通勤電車で読んでいて、えらい目に遭いました(^_^;)。

 諸説ありますが、人間の五感(視覚・聴覚・触覚・味覚)に占める視覚の割合は8割以上だそうです。その視覚を失うと、どれだけの情報が欠落するか想像するだけで身がすくみます。とはいえ、視覚を失うという運命を背負った人は現実に存在していて、まだまだ私たちの助けを必要としています。

 そんなこんなで定刻に講演会は始まりました。壇上にあらわれたカメちゃん、これまで似顔絵でしか知らなかったその素顔は、失礼ながら思った以上にお若くて、お召し物もお洒落でダンディな雰囲気。しかも声がとっても優しい💗という三拍子揃った素敵な方。講演中にはお約束の「お歌」のコーナーもあり、笑ったり泣いたり拍手したり、大忙しの講演はあっという間に終了しました。

カメちゃんのCD。ホントに美声です。タイトルの「盲目の心眼ソングライター」がほのぼのとさせてくれます。曲はもちろんオリジナル♬

 私はこれまで、視覚に障害を持つ人とはほとんど接点がなく、正直「ちょっと遠い世界」のように感じていました。ところがカメちゃんの本を読んだことと、昨秋に視覚障害の皆さんと二人乗りのタンデムバイク(自転車)に乗り、大阪市内の〝渡船〟を巡るサイクルイベントに参加したことで、考え方と行動が変わりました。

これがタンデム自転車。前に乗るのがパイロット、後ろがストーカー(驚!)と呼びます。初心者パイロット(私)を、ベテランストーカーの方が上手にリードしてくれたので、無事走りきることができました。

 この時は、主催するNPO法人サイクルボランティア・ジャパンの拠点がある御幣島(大阪市西淀川区)から、ユニバーサルスタジオジャパンのある桜島、天保山からIKEAのある大正区まで南下し、御幣島へ戻る約30km。参加したのは全盲に近い方ばかりでしたが、まわりが見えなくても体に受ける風や路面からの振動、そして船で感じる潮風など、自転車で旅をする喜びを全身で感じておられました。この時に実践した介助の経験のおかげで、白杖を持つ人に抵抗なく声をかけるようになったことが、私にとっての大きな変化です。なによりも、参加した皆さんとの交流が本当に楽しかった!

千本松大橋、通称「めがね橋」を眺めながら進む〝渡船〟。江戸時代、木津川堤防にたくさんの松が植えられていたことからそう名付けられました。いまは工業地帯でまったく面影がありません。

 世の中には、いろんなハンディキャップを持つ人々がいます。私たちは広告の仕事を通じて、すべての人が安全で快適に移動できる空間を提供したいという夢があります。それにはまず、困っている人を見たら声をかける。これを繰り返すことで、いろんな気づきやアイデアが生まれるはず。カメちゃんを筆頭に、すべての人々が思う存分外出を楽しめる世の中の実現に向けて、今日も新たな気づきを求めて街中をキョロキョロしながら歩きます(←一歩間違えればただの不審者)。