
物語の隅っこで、今日も働く。
小さい頃は、絵描きさんになれたらいいなと思っていました。でも私より上手な友達がいてその夢はすぐに諦めました。
それより長く夢見ていたのは、好きな本に囲まれて働いて、自分がいいと思った本を人に勧める仕事。自分が読んだおすすめの本だけを置く本屋さんになることでした。小学生の頃、何かを頑張ったご褒美に祖父はいつも本を購入してくれました。ただ漫画は禁止、文字の本だけ。その影響で、自然と本が好きになりました。

小学校の図書室で年間100冊、本を借りることもありました。大学は司書資格が取れるところを選び、古本屋でアルバイトもしましたが、電子化に伴う紙の本を取り巻く環境の変化を感じて、その夢はわりとあっさり手放しました。

周りを見ると、何かに熱中して頑張ってきた人ばかりですが、自分はすぐ諦めのつく性格もあって、どちらかというと平凡に生きてきました。物語の主人公になれるような人生でもありません。
でも、私は主人公たちが冒険に出る“きっかけ”の一言を口にするモブのような、主人公が前向きに活躍できる場を整える役割でいい、と思っています。仕事もひとつの物語のようなもので、様々な人が関わって、ひとつの形ができていく。

今は広告の仕事に関わり、たくさんの人の手でつくられていく現場の中にいます。日々いろいろなデザインに触れながら、つくったものが世の中に出ていく、その手前に関われている今の仕事は、昔、本屋で本の表紙を眺めたり、背表紙の高さをそろえて並べたりする感覚に少し似ていて、悪くないなと思っています。

今月の豆知識!
ミュージックの日

京都新宿区西新宿に本部を置く音楽関係者の労働団体・日本音楽家ユニオンが1991年(平成3年)に制定されました。クラブなどで働く演奏家たちの存在をアピールし、生の音楽をもっと楽しんでもらう日です。日本の音楽文化の理解を深め、この日を中心に全国各地でコンサートなどのイベントが開催されます。
次回は2026年4月1日(水)発行です